企業買収の意思決定に必要な法務リスクの調査について

 M&Aは,企業が大きく成長するため,現在では,中小企業においても通常の手段として頻繁に用いられるようになりました。

ただし,M&Aにおいては,買収対象企業が有する法律上の原因により,M&Aがに有効に成立しなかったり,有効に成立したとしても買収側が意図したビジネス展開が不可能であったり,思わぬ損害が生じたりすることがあります。これらのリスクは,正式契約前に対象会社を調査することによって,事前に明らかになることも少なくありません。そのため,M&Aにおいては,正式契約前に対象会社(の潜在的リスク)を調査・検討することが極めて重要です。
この調査・検討を一般にデュー・ディリジェンス(due diligence)(以下「DD」)といい,法律面から行うものを特に法務DDといいます。

● DDの効果
  DDによって対象会社について様々な問題点が発見されることがありますが,それこそがDDを実施した効果です。発見された問題点に応じて,対応策を検討します。
  例えばコンプライアンス上の問題などの軽微な問題が発見された場合は,M&A実行後直ちに改善措置を取ることができます。
  また,行政庁等での形式的な手続の必要などM&A実行まで待つことができなくても事前に改善することができるものが発見された場合には,正式契約の締結条件としたり,契約上売主に実行前の改善を義務付けたりすることができます。
  さらに,対象会社の特定の取引先との契約や従業員とのトラブル等改善が容易でない問題点が発見された場合には,予定していた株式買取りを事業譲受けにするなどストラクチャの変更をしたりすることができます。
これらは同時に買収代金を減額する材料ともなりえます。
  たとえ明確化していなくても,問題点が潜在することが疑われる場合は,問題となるような事実やリスクがない旨を契約上売主に表明・保証させたり,万一問題点が顕在化した場合の補償について契約上定めることが考えられます。
そして,改善が困難で買収代金額等契約条件に反映するだけでは足りない問題点が発見された場合は,M&Aを中止することが最善の策であることもあります。

● 監査役から見た注意点
  法務DDを経ずにM&Aを実行することを許すと,後日法律上の問題が生じたときには,役員の責任問題になります。監査役は,取締役がDDを経たかどうか,取締役が実施したDDが十分なものであるか,確認のうえ問題点に応じて対策を求める必要があります。

 今日はこのあたりで。